第3章 2 暖かな黒の中で
純度の高い魔力を込めた、魔石……何だかこの色に見覚えがあったが、思い出したのは屋敷で待つ幼いドラークの事だった。
あの子と、色が似ている。
「それが、君の持つ魔力の色だ。」
「私の魔力……??」
自分が魔力を持つだなんて、全く実感が無いのだけれど、周りを見る限り目の前の現象が本当ならば確かにこれは私の持つ力が花を変えたということなのだろう。
ならば、私は見てみたいと、そう思ったのだ。
「ハイデスさんのバラも……見てみたいです。」
「私の……??」
少し困惑した表情で私を見るが、花屋の店主がニコニコとバラを差し出す。
断ることも出来なくなってしまったハイデスさんはゆっくりとその少しくすんだ一輪のバラを受け取った。
すると、私の時同様に一瞬にしてその身の色を変えバラに思わず息を飲んだ。
ハイデスさんの髪のように、黒く、艶やかで一切の光を通さないその色は本来植物ではあまり見ることのない色だ。
店主は少し驚いた様子で、ハイデスさんの顔を確認するとハッとして目を開かせる。
私は、自分の手に持つバラとは対極的な、その黒く艶やかなバラから目が離せないでいた。
「……まぁ、こんなものだ。逆言ってしまうといくら変装をしたところでコレを渡されてしまうとその者の持つ魔力がバレてしまうので、素性調査としての道具としても使われるくらいだからな。」
綺麗だと、私は素直にそう感じた。
「と、こんなところか。」
そう言って手にしたバラを潰そうとするハイデスさんだったが、一瞬手を止めて私を見た。
「……これは加工すればお守りや厄除けにもなる。私の魔力は見ての通り少し特殊でね。折角だ、こうして身に付けているといい。君に何かあってはいけないからね。」
耳元へ飾り付けられた漆黒のそれが、明るいドレスには何だかとても重く感じたが、不思議とそれが嬉しかった。
すれ違う人達が、たまにその花を見て少し驚いた様子を見せるが、そんな事はハイデスさんは気にしないとばかりに私の手を引いて街を歩いた。