第3章 2 暖かな黒の中で
「さて、行こうか。」
ハイデスさんの腕に手を添えながらゆっくりと石畳の道を進む。
馬車が停まったのは少し奥まった裏道だったようで、広い通りに出た途端、その鮮やかさに思わず息をのんだ。
街並みは勿論、行き交う人達の装いから髪色までが実に鮮やかで、薄紫色の私のドレスが地味に見えた。
「ここからは人が多いから、しっかり掴まっているんだよ?」
ハイデスさんは珍しく明るめの紺色のスーツで品良く整えている。
いつも黒の服を着ているのに珍しいな、と思っていたので気が付けばじっとその姿を見てしまっていた。
「……いつもの服ではあまりにも目立ってしまうからね。私だってこういう服装もたまには着るさ。」
黒が珍しい色だということを、私は今まで忘れてしまっていた。
確かに、この街の様子から見ると黒という色は逆に目立ってしまうのかもしれない。
薄い色ですら珍しいのに。
「……皆さん、華やかな色がお好きなんですね。」
「好きというよりは、それが家柄のようなものだからね。肌に触れる衣服はその人の魔力の影響を受けやすく、モノによってはすぐに変化してしまうんだよ。」
「え、そんなに変わるものなんですか??」
「まぁ、モノによるが……植物や生き物由来のモノ……所謂衣類や木材は影響を受けやすいな。石材や鉄、鋼はあまり変わらない。勿論、その質や製作過程で異なるけれど。」
へぇー、なんだかすごく面白い。
思わず、キョロキョロと周りを見回してしまう。
確かに、鮮やかだといっても建物自体はレンガや石材のものがほとんどで、茶を中心とした色合い。
ただ、外環の装飾がそれぞれ工夫を凝らしていて美しい。
あれ、でもそうなるとハイデスさんの服は黒くなってしまったりしないのかな?
そう思って聞いてみると、どうやら変わらないように加工がされているモノらしく、意図的に変えようとしない限りはこのままの色を保ってくれるらしい。
中にはそれ専門のお店も存在するらしく、興味津々で聞いていたら何故か笑われてしまった。