第3章 2 暖かな黒の中で
え……??
純粋に心配してくれてる筈なのに、私の鼓動はドクドクと激しく音を立てる。
「……アンリ、顔が真っ赤だ。それに、少し体が熱いね。」
ああもう本当に、どうかしている。
どうかしてしまっている。
体温が上がっていくのを感じて、体の奥が、じくじくとむず痒くなってさえくる。
頬に触れた、ハイデスさんの手がひんやりと冷たくて、心地いいとすら感じながら恐る恐る視線を合わせようと見上げるが、叶わなかった。
代わりに額に柔らかな感触と、そっと撫でられた耳元にびくりと体を震わせた。
どのくらいそうしていただろうか。
10秒も無かったような気もするが、何十分もの間そうしていたような気さえする。
「……あぁ、もう付いたようだね。」
すっと体を離され、そのあと数える間もなく馬車のドアが開いた。
「アンリ、降りられるかい?」
気が付けば外へ降りているハイデスさんがいて、その差し出された手を取ると、ふわりと体が浮いた。
「、ひゃっ」
「はじめての馬車移動だったからね、疲れただろう?」
「あ、えっと……だ、大丈夫です……。」
思わず返してしまった返事に、眉をひそめられてしまったのは当然かもしれない。
「本当に??アンリ、嘘はいけないよ……でも、熱っぽいのは治まったかな。」
「、え……??」
キョトン、としてハイデスさんを見るとにこりと相変わらず柔らかな笑みを浮かべている。
確かに、朝から可笑しかった体の奥が疼くような火照りが無くなっている。
こんな、横抱きにされているというのに恥ずかしさはあるが、先程のような変な感じはもうしなかった。
「あ、本当だ……。」
「大丈夫そうかい?必要ならこのまま街を移動しても良いのだけれど……。」
「い、いえっ!自分で歩けますので……!」
「そうか?……残念だ。」
悪戯に笑った後、ゆっくりと下ろされた。
さっきまで馬車に揺られていたのもあって少し変な感覚が残るが、すぐに慣れた。
「辛くなったら、すぐに私に言うんだ。いいね?」
そう言うハイデスさんは優しく微笑むと、艶のある黒髪を隠すように深くハットを被った。