第3章 2 暖かな黒の中で
「分かってはいたんだが……本物だな。」
神妙な面持ちで見詰める視線の先にはしゃりしゃりと美味しそうに果物を頬張る一匹の子ドラゴン。
「生きたユウェルドラークを、この目に出来るとは思っていなかったな。」
リンゴに飽きたのか、次はブドウにかぶり付く。
いい食べっぷりに思わず頬が緩む。
「あの、今日は良かったんですか……?お仕事休ませてしまって……」
「あぁ、それは気にしないでいい。ドラークが産まれたとなれば色々とやることもあるからな。」
「ハイデス様、ドラークとの契約においての書類をお持ち致しました。」
ス、と差し出される数枚の用紙に目を通して、サラサラと筆を走らせると、その後私に差し出される。
「ドラークとの契約は国に申し出を出す必要があってな。アンリはここへサインするだけでいい。後は私がやっておく。」
なるほど、単にペットを飼うのと違うからね。
そう思って、言われた通りの場所へ名前を記す。
これで終わりらしい。もっと適性検査とかあるのかなって一瞬考えたりもしたのだが、実際にドラークと契約してしまっているかぎりそれを引き離すのは不可能らしく届け出だけでいいのだとか。
「さて、後は必要なものを揃えるか。アンリ、まだ外に出たことはないだろう?」
「外、ですか……?」
思わぬ提案にキョトンとする。外って、お庭じゃないよね?
「街へ買い出しに出よう。その子のものも、君の物も。」
お買い物、と聞いて胸が高鳴った。
実はちょっぴり街を歩いてみたかったのだ。だが、肝心な事に気が付く。
私、お金持ってない。
「あ、でも……私、お金持ってないですし……。」
でも、この子に必要なものは出世払いでもいいから買い与えたい。
そんな事を思っていたらハイデスさんが笑っていた。
「アンリ、君は本当に可愛いな……娘のものを買い与えるのに、どうして本人から金を取る必要がある?そんな甲斐性無しに私は見えるか?」
「そうですよ、お嬢様。何一つ不自由させることはありませんので、存分に旦那様に甘えてしまって宜しいのですよ。」
優しく笑う二人に、私はやっと素直にありがとうと告げることが出来たと思う。