第3章 2 暖かな黒の中で
……何だか、変な夢を見た。
前にも見た気がする。霧がかっていてよく思い出せない。
布団を捲ると汗が酷かった。
どくどくと心臓が脈打っているのがよく分かる。
うなされてた、のかな?
ほんのりベタベタする身体が気持ち悪くて、私はすぐに部屋のお風呂へ向かった。
少し熱めのシャワーが心地いい。
昨日、ハイデスさん達と学校の事とか話したから、もしかしたら気持ちが高ぶってたのかな。
そういう時って、変な夢を見たりするものだから。
髪があまり濡れない程度に早めに出て、簡単に着替えを済ませる。
お恥ずかしいことにここのドレスは一人では着られないのでメイドさんが来てくれるのを待つことにする。
さっぱりしたけど、どうにも身体の熱が引かない。
のぼせる程では無かった筈なんだけど、と思っていればふと枕元のタマゴちゃんが目について、触ってみたらひんやりした。
少し熱いくらいの体にはそれが心地好くて思わず抱っこして頬を寄せる。
「んー、ひんやりぃ……きもちい……。」
しばらくそうしていると、不意にピシッという音が部屋に響いた。
「……え?」
あろうことかタマゴちゃんが割れている!
あわあわする私をよそに、大きくなる割れ目は遂に内側から突き破られ、小さな口が顔を出した。
バキバキと音を立てて出てきたのは、透き通る羽を持った小さなドラゴンだった。
「う、うそ……生まれた……。」
キュー、と可愛らしく喉を鳴らして薄い瞼は閉じられているが、深いエメラルドの瞳が透けて見える。
宝石かと思った。
全身が薄く透き通っていて、朝日に当りオパールのように輝く。
驚くほどに美しいその身体を、私は目にしたことがあった気がする。
あぁ、やっぱり私はこの子を知っているんだと、そう思った。
頭に付いた殻を指先で退けると、クリン、と大きな瞳が開かれる。目が合うとちょっとビックリしたが、すぐに私の手元にすり寄ってくる。
「な、何この可愛い生き物……。」
爬虫類が苦手だという人に、今ならそんなのあり得ないと豪語する事が出来る自身があった。
キューキュー鳴いて私の手によじ登ろうとする。
まだ片手でもかろうじで持ち上げる事が出来るその身体は思ったよりずっしりしていた。