第5章 purple
疲れた体で家に帰る。
いつものように鍵を回そうと
ドアに手をかけると
扉が開いていることに気づいた。
「…え、」
そっと扉を開けると
中は電気がついていて。
廊下とリビングの間にはもう一枚扉があって
その奥からはテレビの音も聞こえる。
泥棒にしては…大胆だよね?
一応携帯を握りしめ
ゆっくりリビングへと向かう。
扉を開けると
「あ、さんおかえり」
とソファーに座ってくつろぐ、
今年初めての彼。
なんとなく、わかってはいたけど
安心してため息が出た。
「…松本くんか、」
え、何?と彼が真顔で尋ねる。
「俺じゃ、ダメでした?」
「いや!違うの、うん、大丈夫」
「んだよそれ、」
そう言ってドスンとソファーに座り
背を向ける。
ああ、この感じ
久しぶりな松本くんの反応に
胸が暖かくなる…場合じゃない
ふてくされた松本くんは厄介だ。
「違う!松本くん!
嬉しいよ会いたかったよほんとだよ!」
私が慌てて隣に座り近づくと
ふてくされていたはずの彼が
ふふ、と笑う。
「…必死すぎると嘘っぽいよ?」
久しぶりに見る、
話すときに歪む唇。
悪戯っぽい表情。
わざとらしく目を細めたりなんかして。
そのまま顔を近づけられて
自然と目を閉じた。
「…あけまして、おめでとう」
唇が離れて目があって
キスなんて初めてじゃないのに
なんだか恥ずかしくて
タイミング違いの言葉が出た。
「それ今?」
と眉を下げて優しい顔をする彼が
「…でもまあ、そうか
おめでとうございます、」
と一度私と距離をとり
ペコリとお辞儀。