第5章 purple
「かんぱーい!」
「お疲れ様です」
「ちょっと、
なんでそんなテンション低いかな」
ジョッキを片手に喉に潤いを与える亮介さん。
「相手が相手っすからね」
「松本くんてあれだね
好き嫌いハッキリしてるよね」
「ハッキリしすぎて
支障がでないこともない」
「あはは、まあ俺は好きだよ
それくらい嫌われてる方が
遠慮しなくていいから」
亮介さんの言葉が
電光石火のごとく
右から左に流れた。
「…亮介さん、どういう意味?」
「松本くん、俺、離婚したんだ」
「…は?」
亮介さんの左手を見る。
…気づかなかった、
何もついていない薬指。
さんのために、
「離婚」という3文字のせいで
その気持ちに重さが出る。
さんから聞く
亮介さんのイメージは
遊んでて、女たらしで、とにかく
だらしのない人。
いつもさんは独りで
亮介さんは傍にいてくれなかった、と
そんな無責任な人。
亮介さんがさんを
想っている想像は出来なかった。
なのに
今目の前にいる亮介さんは
こんなに、優しい顔をして
さんの名前を呼ぶ。