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誰得?俺得!!短編集

第5章 【伊武崎峻】言えなかったこと





いつの間にかお祭りの騒がしさはどこかへ消えて、近くの公園にたどり着いていた。

峻の手は、私の手のひらを掴んだまま離さない。

今のこの状況が上手く飲み込めない私を置いて、ずっと私に背を向けていた峻がこちらに振り向く。

「悪い。足、痛くなってないか」

そんな言葉とともに、手のひらが離れた。

「……うん、大丈夫」

それ以上の言葉が出て来ない自分がいやで、自由になった手のひらを後ろ手にきつく握りしめる。

「さっきは勢いで言ったけど」

前髪の隙間から覗く、峻の瞳が私をまっすぐに見つめていた。

「俺はのこと、諦める気ないから」

その言葉がどんなに私を喜ばせているか。

「嫌われてようが離れてようが、ずっとお前だけなんだよ」

峻はきっと知らない。

「そんなの……」



「私だってずっと、峻だけが好き!」



ずっとずっと変わらない、私の気持ち。

「六年生のバレンタインの日、他の子からチョコをもらってるとこ、見ちゃって、自信、なくて」

峻も私を好きで居てくれた。

嬉しい、でもやっぱり、自信なんてない。

峻みたいに目標もなくて、弱い私が峻の隣に居ていいのだろうか。

「大丈夫だ」

私の思考を遮るように、峻の腕が私を包み込む。

「自信ないなんて言わせない。これからはちゃんと伝えるから」

熱い胸元に顔をうずめて、溢れた涙を拭った。

「だから、も、俺に教えて」

そっと離れていく身体の、二人の間に出来た隙間。

ほぼゼロ距離で峻を見上げると、その端正な顔立ちがはっきりと見えた。

「俺が好きだって、ちゃんと言って」

その瞳に射抜かれたと思ったら、唇さえも奪われていた。

私はずっと峻が好きで、峻も私がずっと好き。

そう信じてもいいのかもしれない。

願わくば、この気持ちがいつまでも私たちの心の中にありますようにと。

そう願ったのは、私だけではないはずだ。





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