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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




『いっちゃんを授かった時、』

話にいきなり俺の名前が出てきて
びっくりする。

『静はそのことを彼に言わないで、
別れようとしたの。』

『迷惑かけるから?』

『私もそう思ったんだけど…
でも静、あの頃、言ったのよ。

"どのみち私達の仲は
いずれ終わるしかないってわかってる。
だけど、子供は一生かけて愛せるから。

この子は
彼との想い出の形で、
私の生きる目的だから、
絶対、手放さない…って。

彼に言わなかったのは、
迷惑かけることを心配したからじゃなくて
言う必要がない、って思ったのね、きっと。

普通の恋愛ではなかったけど、
充分、満たされて、幸せだったのかな。
それと多分、彼より、産まれてくる子供に
…いっちゃんに、ってことよ?…
あれこれ巻き込まれたりすることで
迷惑かけたくなかったんだと思う。』

『ふーん。』

さすがにその辺りの気持ちは
まだ高校生だし、
そもそも男の俺ではよくわからないから、
適当に相づちをうった。

『だけど、急に冷たくなった静の本心に
彼は気付くわよね、やっぱり。

…どんなに話し合っても
"結婚も認知もしなくていいから産ませて!"の
一点張りだった静に、
彼は一計を案じて、
別れるかわりに仕事を任せたの。』

『…それが、今の店?』

『そう。自分達のような立場の人間が
人目を気にせず楽しめるような、
密やかな場所を作って欲しい、って。』

『…それってさぁ、
金持ちの男のわがままじゃねーの?』

『(笑)あ、やっぱりそう思う?
私も最初、その話聞いた時、そう思った。
自分が時々来て、静を独占したいから
そんなこと言うんじゃないか、って。

…でも、彼は私達とは
考えるレベルが違ったのよね。』

まずはビジネスとして、
そういう場所の価値を考えて。

母さんという女が
そこを切り盛り出来ると見越して。

そして
一人で子供を育てるとなった時、
自分の融通で調整できる仕事場や
周囲に助けてくれる環境が必要だと察し

もしも自分がいなくなった後にも
そこが母と息子の生活を支えられて、

何よりも、
"名前"という形で、
実らなかったけれど大切な人への想いを
表すことが出来る。


二人の名前、
そして俺の名前の入った店、
"一人静"は、

男から
女への、息子への、
幸せを祈った、贈り物だったわけか…


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