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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




学校に行ってからも、
母さんと綾ちゃんが
どうしているのか気になって、
授業なんか、上の空だった。

…考えれば考えるほど、俺がバカだった。
何も出来ないくせに背伸びして、
結局、綾ちゃんの新しい生活を
邪魔しただけだった気がする。

…そんな後悔ばかり思い浮かび
いたたまれない気持ちのまま迎えた、昼。

いつものように
友達数人と机を向かい合わせて
喋りながら何気なく弁当を開く。

?!

『マツ、どした?』

『あ、箸?俺、割り箸あるよ?』

『いや、じゃねーけど…
わりぃ、ちょっと用事思い出した。』

弁当の蓋を閉め直し、
そっと抱えて教室を離れる。

どっか、一人になれるとこ…
寒い季節。
外で弁当を食うやつはほとんどいなくて
だけど今日は、幸い、
風もなく日差しが暖かい。

校舎と倉庫の間に日だまりを見つけて座り、
もう1度、弁当を開ける。

オムライス。ハンバーグ。
ハムいっぱいのポテトサラダ…
その他のおかずも。

間違いない。
俺が好きなもの。
そして、どれも、
綾ちゃんと俺のここ数ヶ月の
想い出にまつわるおかずばかり。

ハンバーグをほおばる。
中にはちゃんと、チーズが入ってて。
…及川と綾ちゃんと3人で食ったな。

ポテトサラダ。
綾ちゃんがいなくなる前の夜も
俺の好物ばっかりの豪華な晩飯、
作ってくれたな。

オムライス。
彼女を振り切って
綾ちゃんちに行った時、
二人で作った。
卵、割るのも混ぜるのも、俺、ヘタで
綾ちゃんに笑われたっけ。

一つ一つ、口にいれるたび、思い出す。

…こんなちっちぇー箱に、
こんな小さなおかず、少しづつ。

作るのも、詰めるのも、大変だったはず。

きっと綾ちゃんも、
同じ事を思い浮かべながら、
まだ暗い台所で、これ、作ってくれた。

そう思うと、
この小さな箱のなかに詰まっているのは
ただの"俺の好物"ではなく、

綾ちゃんから俺への
"ありがとう"みたいな気持ち、
なんだって、わかる。

"もりもり食べる姿、見るだけで嬉しい。"

よくそう言ってた綾ちゃんなりの
俺への、気持ち。

…俺も、ちょっとは役に立ててたかもな。



その日の弁当は、
今までで1番、ゆっくり、食べた。



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