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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




『はい、マスクとカイロ…
あとは大丈夫?忘れ物、ない?』

『うん…ね、綾ちゃん、』

『ん?』

『ホントに、母さんと直接、話すつもり?』

『うん。パートの前に会ってくる。』

『…大丈夫?』

新しい人生を歩きはじめた綾ちゃんを
あらゆる面で支えてきた、母さん。

この街で暮らすなら、
母さんは絶対、力になる存在だ。

『ケンカとかになったら…』

『心配しないでいいから、
いっちゃんもちゃんと、家に帰るのよ。
変に反抗したり、しないこと。』

『…うん、わかった。』

こんな話で、終わるのかな?

あんなにたくさん想い出があるこの部屋。
あんなに逢いたいと思ってたこの人と、
こんな風に、色気も涙もないまま、
あっけなく終わるのかな?

そう思った時、
綾ちゃんが、小さな声で言った。

『この部屋で、その、ほら、
…仲良く?…したことは、お互い、
絶対、誰にも言わないでいようね。
私達だけの秘密。特別な想い出。』

"二人だけの秘密の想い出"
そう言ってもらえたことが嬉しくて、

素直に、言えた。

『綾ちゃん、俺、
いっぱいワガママ言ったし、
いっぱい迷惑かけて、ごめん。』

『ううん、私こそ、お礼言いたいくらい。
自分で自分を苦しめて、
自分で自分を傷つけてたダメな私を、
癒して、元気くれて、笑わせて、
…私の心の傷を治してくれたのは、
間違いなく、いっちゃんよ。』

あ。

今、ピッ、って、
音がしたような気がした。
…絆創膏が、はがれる音。

"あなた達のは恋愛じゃない。
傷が治るまでの絆創膏"

…悔しいけど、
母さんの言った通りだったのかも。

結局、完敗だな…

これが最後なら、なにか言わなくちゃ、
そう思うのに、
何を言っていいかわからなくて。

『…俺、俺さ、綾ちゃんのこと、』

俺の言葉を遮るように、

『はい、お弁当。』

小さな紙袋を手渡される。

『しっかり食べて、受験、頑張って。
…風邪、ひかないようにね。』

好きだった、って言葉は、
言わせてもらえないまま。

『さ、いってらっしゃい!』

『うん、いってきます。』

…俺たちに似合うのは、
好きだ、とか愛してる、より、
こんな言葉なんだろうな。

でももう、
ただいま、も、おかえり、も
交わせないんだな…


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