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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




急かされるように朝飯を平らげて
学校に行く支度をする。

…歯を磨こうとして手にした、
持ってきたばかりの歯ブラシ。
ここで、暮らすつもりだった。

でも、それはもう、
あり得ないらしい…ってことは、
(ハッキリ言われた訳じゃないけど)
あの綾ちゃんの言葉を聞けば、
ガキな俺でも、わかる。

…展開、早すぎ。

初めて一緒に眠って、
すげー幸せだったのは、
たった2日前のこと。

そのすぐ後に、母さんに会うとは。
翌日、家出してきたのに、
たった一晩で、帰らされるとは。

…そして、うっすら、わかってる。
もう、俺、ここに来ることは、ない。

ほんの一時間前までは、
受験とかもやめちゃっていいから
ここで綾ちゃんと暮らそう、
そんなことを思ってたのに。

何もかも、早すぎだろ。
夢見るヒマも、ねーっつーの。

パチン。

歯を磨き終わって、
歯ブラシを、ケースに入れた。

洗面所の風景。
店で泣いてた綾ちゃん連れて
この家に初めて来た時、
玄関先で抱いたあと、
この洗面所でもイチャイチャしたな…

突然、及川と綾ちゃんが現れて
マジ切れしかかったこともあったっけ。

この家に来たのは、
ほんの何ヵ月、
ほんの何回、くらいのことなのに、

イヤになるほど、次々と思い出す。

『いっちゃーん、時間、大丈夫?』

『すぐ行くー。』

鏡の中の自分。

…情けない顔、すんじゃねーぞ、俺。
結局、中途半端なままだったけど、

せめて、心配かけずに終わらせよう。

パンッ、と両手で頬に気合いを入れて、

『あ、やべー!
マスクとカイロ、持ってくんの忘れた!
綾ちゃん、あったらちょーだい!』

マスクもカイロも、
ホントはどーでもいいんだけど、

ガキはガキなりに。
高校生は高校生なりに。

元気で無鉄砲でちょっとおバカで、
よく食ってよく眠る、手のかかる息子、
…みたいな存在で、消えよう、って。

俺なりの、
"ごめん"と"ありがとう"を込めた、
精一杯のカラ元気で、洗面所を飛び出した。


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