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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




目が覚めた時、最初に思ったのは
"うまそうな匂いがする…"だった。

自分ちのベッドとは違う、低い感触。
布団からはみ出した手が畳に触れて
一瞬で、あれこれ思い出す。

綾ちゃんちに泊まったんだ。
んで、今、このうまそうな匂い、
ということは、綾ちゃんは
ちゃんと、ここにいる、ってこと。

嬉しくて、飛び起きた。
すぐに、台所へ向かう。

ストーブの匂いと、朝飯の匂い。
小さな台所でクルクルと動き回る
すっぴんの綾ちゃんのエプロン姿。
…あぁ、家出してよかった。
そんなことを思う、幸せな朝の台所。

『おはよ。』

『あら、早起きじゃない?
あ、もしかして台所がうるさかった?
いっちゃんちみたいに広くないから…』

『ううん、ぐっすり寝たし、
うまそうな匂いで目が覚めたから。
むしろ朝からいい気分!』

『お弁当、出来てるからね。
顔洗っておいで。朝御飯にしよ。』

布団をたたんで小さなちゃぶ台を出して
二人で朝飯。
…ままごとみたいな、朝の風景。

明日から、毎日、こんな朝が来るなら、
もう、ホントに受験とかどーでもいい。
マジでそんなウキウキした気持ちで、
俺にしては珍しく、朝から話しまくる。

『ね、綾ちゃん、
俺、今日、学校終わったらさ、
家に寄って少し荷物取ってから来る。
帰り、四時過ぎかな。
その頃って、もう仕事、行ってる?
なら、鍵、どっか置いといてくれると…』

綾ちゃんはニッコリ笑って、

…そして、おだやかに、
だけど、きっぱり、言った。



『ここじゃなくて、家に、帰ってね。』



…そんな。

『今さら、帰れるわけねーじゃん。』

『なんで?他に帰るところないでしょ。』

『だから、ここに…』

『ここは、いっちゃんの家じゃないから。』

そりゃ、そうだけど。

急に拒まれた戸惑いと、
急に拒まれた腹立たしさ。

『そんなん、ずりぃだろ。
俺だけ、母さんと直接対決しろって?
今さらどんな顔して
母さんと二人で暮らせって言うんだよ?』

自分のことを棚に上げて
こんなこと言える立場じゃないって
わかってはいるのに、
言葉は、止まらなくて。

『綾ちゃん、
都合悪くなったからって、また逃げんの?
息子を置いて出てきたみたいに、
今度は俺を置いて知らんぷりすんだ?』

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