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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




まるでそこに俺は存在しないように、
運転手の泉田さんと母さんの会話は続く。

『泉田さん、これ、うちの息子なの。』

『ええっ、ホントですか?
いやー、ママにこんな大きな息子さんが
いたなんて、びっくりですわ。』

『高3。受験生なもんだから、
イトコのところに勉強みてもらいに
行ってたのよね?』

え?
なんの話だ?
とりあえず、頷くしかない。

『…え、ぁ、うん…』

『こんな遅くまで頑張って、そりゃ偉い!
しかも領収書ちゃんととる辺り、さすが
しっかり者のママの息子さんですわ。
…はい、ママ、領収書。』

ちょ、ちょっと待て、
それは、母さんに渡しちゃダメだって!
…と、俺が言えるわけもなく、

受け取った領収書をチラリと見た母は、
サラリと何気なく言った。

『へぇ、あそこからここまで、
このくらいの金額?思ったより安いわ。
ベテランドライバーならではの
裏道とか通ると、このくらいなの?』

え?
"あそこからここ"って
どこの話、してるんだ?
…と思ったら、

『あそこは、住所は東国分だけど、
ほとんど若葉通りみたいなもんだから、』

え、ええっ?
い、泉田さん?!
今、サラッと住所、言ったよな?!
それ、もろ綾ちゃんちの辺り!!

もう、それ言われたら、
"及川んち行ってた"なんてウソ、
使えなくなるじゃん(焦)

『ゲ、ゲホゲホ…』

泉田さんにサインを送るつもりで
精一杯、咳き込んでみたけど、
既に俺のことなど眼中にないらしく。

飼い主に褒められたい仔犬のように
意気揚々と母さんに話す、泉田さん。

『定禅池通りと広場通の間に
昼は一方通行だけど
夜は通れる道があって、
そこをつーっと通ると近いんですよ!』

ぅぅ、俺の稚拙な作戦なんか
ボロボロと崩れていくぅ…

『まぁ、さすが泉田さん!
私も、夜の街には詳しいつもりだけど、
道のことはタクシーの運転手さんには
かなわないわ。やっぱり頼りになる!』

母さんの言葉に、得意気な泉田さん。

あぁ…
男って、こんなに簡単に
女の罠にかかるのか…

そして、
女って、こんなに見事に
男をあやつるのか…

それを知ったところで
今さらどーにもならねぇけどな。



…その後、
母さんと二人きりで
エレベーターに乗ってる間、
俺は、
沈黙と恐ろしさで、
生きた心地がしなかった。




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