第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
母親にああ言った手前、
俺もなんとなく家に居づらくて、
結局、大晦日は及川の家で過ごした。
…アイツのことだ。
女の子からの誘いもあったはずだけど、
『寒い中、わざわざ外行かなくてもね。』
とか何とか言いながら、
結局、家で、俺と過ごしてくれた。
『クリスマスも年末年始も
一緒に過ごせないとか、どーだよ?
俺と綾ちゃんって、何なんだ?』
と愚痴る俺に、及川は言った。
『そりゃ、しょーがないよ。
まっつんは夢中かもしんないけど、
綾さんにとっちゃ、
愛でも恋でもないんだからさ。』
『…でも、一緒にいる時は、結構、
楽しそうな顔してくれてると思うけど。』
『好きじゃなくても、
言い寄ってくれたら嬉しいから
望まれたら応えちゃう、って気持ち、
まっつんだってわかるだろ?』
『わかんねーよ。』
『わかるって。まっつんも同じだったじゃん。』
『何が同じだよ?!』
『別れた彼女ちゃん。』
…あ。
ハッとした。
俺に告白してきてくれて、
びっくりしたけど嬉しかった。
別に好きってわけじゃなかったけど
嫌いでもないからつきあった。
好意を示してくれるのは嬉しくて、
俺から何かしてやろうとは思わなくても
望まれることには応えてやりたかった。
…俺が綾ちゃんに
もっと振り向いて欲しいように、
別れた彼女も、
俺にもっと振り向いて欲しくて、
弁当作ったり、尾行してきたり、
処女をもらってほしがったり。
『…なんか、俺、悪かったかもな。』
『いや、いーんじゃない?
まっつんにつれなくされたからこそ
彼女ちゃん、今の彼と幸せそうだもんね。』
『そーだっけ?』
『まっつんは興味ないだろうけど、
俺、時々、学校で見るよ。
まっつんといた時より、なんか、
今の方がイキイキしてる気がする。
…あ、ごめん、別に
まっつんのこと、ディスったわけじゃ…』
『わかってるよ。』
そばにいるのに、
こっちを向いてもらえない気持ち。
どことなく、自分は1番ではない、と
態度で感じてしまう切なさ。
自覚してなかったけど、
彼女に味あわせた辛さが
そのまま俺に返ってきた、ってことか。
『…こういうの、何とか言うよな?』
『因果応報?』
『…それだ。』
『…折角だから、入試に出るといいね。』
『…だな(苦笑)』