第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
**************************
好きだ、という気持ちだけでは
うまくいかないこともある。
気持ちの熱量やベクトルが
ほんの少し、違うってだけで、
焦ったり
弱気になったり
強がってみたりして。
そんな小さなことが
結末に続く大事な岐路なんだと、
振り返ると、わかる。
…それを経験することで、
他人の痛みを理解できたり、
自分にとって大切なことを
見つけられるようになるんだ、って
知れたことが、
俺のこの恋の1番の意味だった、と、
思えるようになったのは
ずいぶん後のことだったけど。
…逆に言えば、
あらゆる逆境を乗り越えてでも
お互い、成就させたいと思える気持ちが
どれだけ人を強くさせるか、というのも
この恋を経験したからこそ
分かったんだとも思うんだ。
俺の、綾ちゃんに対する気持ちは
果たして本当に"恋"だったのかどうか。
もしかしたら
及川が言うみたいに
"性少年の盛り時"とか
そういうヤツだったのかもしれないけど、
でも明らかに、
それ以降の俺の恋愛の基準は、
いつも、綾ちゃんだったことは
間違いない。
あぁ、もう一人、
イヤでも出てくる基準がいたな。
…母さん。
二人とも、
強くて、
強がりで、
しなやかで、
でも時々、もろくて、
一途で、
真っ直ぐで。
…及川達に"まっつん、マニアック!"
とかってよく言われたけどさ、
あんな女性達に囲まれて育ったら、
フツーの恋愛じゃ物足りないのは
しょーがねぇんじゃねーのかな?
*******************************