第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
やっと手に入れた
綾ちゃんの心と身体。
1度手離してしまったらきっと、
"なかったこと"にされてしまう。
"一夜の過ち"として、
夢みたいに、幻みたいに。
…そんなの、イヤだ。
『俺、今夜、ここに泊まる。』
『なに言ってるの、ダーメ。』
『だって、』
目の前の、
柔らかな二つの膨らみに手を伸ばす。
『…これ、触りながら眠りたいし。』
綾ちゃんは、
俺の手の上に自分の手を重ねて、
そっと胸に押し付ける。
『心配しなくても、
だぁれも取らないから、安心して。』
それって…
『俺、また、触りに来ても、いいの?』
胸で手を重ね合わせたまま、
綾ちゃんは、フフフ、と笑った。
『イエス、って言いづらいほど、
どストレートな言葉ね。』
あぁ、そうか。
綾ちゃんの立場では、
"またセックスしにおいで"的な
内容になってしまう言葉は
さすがに言えないんだろう。
『じゃ、飯食いなら、また来てもいい?』
『それなら、大歓迎。
…そのためにも、静を悲しませちゃダメよ。
早く、帰りなさい。』
それなら、納得いく。
母さんに疑われたりしたら、
ここに来れなくなる。
うん、わかった、と頷いて
素直に胸から手を離し、
二人でゴソゴソ服を着る。
…脱ぎ散らかした服や、
ぐちゃぐちゃに乱れた寝具が、
さっきまでの激しさを物語ってる。
『綾ちゃん、』
『ん?』
『俺、綾ちゃんの言うこときいて
おとなしく帰るんだからさ、
綾ちゃんも、俺の頼み、きいて。』
『頼み?なぁに?』
『…俺が来ない時も、
飯、ちゃんと、食って。じゃないと、』
まだ、ショーツとブラまでしか
着けてない身体を抱き締める。
『あんま痩せると、俺、心配で
勉強が手につかなくなりそうだ。』
『それは大変!』
笑いながら、
俺のことを抱き締め返してくれる。
『私がちゃんと食べてるかどうか、
いっちゃん、時々、確かめに来てね。』
次に繋がる約束が、嬉しくて。
帰りの道のりは、
気持ちが浮かれて、あっという間だった。
…彼女と別れた日に、
別の恋が実った、なんて。
それって結構、
ヒドイ男なのかもしれないけど、
自分の気持ちに嘘をつかない、って
こんなに清々しいんだって、知った。