第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『だから…いっちゃん、
手、そのままにしててね、』
綾ちゃんは、
俺に胸を揉ませたまま、
俺のシャツのボタンをはずし始めた。
『いっちゃんが、
こんなヤらしい女の相手してくれるなら、』
シャツのボタンが、全部、はずされる。
そのまま、ズボンの前に、手がかかる。
『…あと一回だけ、愛させて。』
カチャリ。
ベルトのバックルがはずれる。
さらに、ボタン。
そして、ファスナー。
『待ってよ、綾ちゃん、』
『…イヤ?』
『ヤなわけ、ねーだろ。』
綾ちゃんの胸元から、手を抜く。
『でも、やられっぱなしは、ヤだ。』
この間も、そうだったじゃん。
"いっちゃんは、悪くない"
そう言って、全部、綾ちゃんに
リードされたままのセックスだった。
あれは
"心を通わせちゃいけない"、っていう
綾ちゃんなりの
罪悪感があったからだけど、
今日は、違う。
俺は、彼女と別れたし、
綾ちゃんは、
楽しみにしてた息子との再会がNG。
…お互い、誰かに寄りかかりたい、
っていう共通点がある。
今度こそ、
俺にも、愛させて。
恋じゃなくて、いい。
人に言えない仲で、いい。
未来とか、希望とか、いらない。
今、目の前にいて、
心から求めあえて、
何かしてあげたくて。
それだけで、いいじゃん。
『今日こそ、俺ら、共犯だから。』
『…後悔、しない?』
『後悔?なんで?もう、彼女もいねーし。』
『…静の顔、見れる?』
いつも、最後のネックは、それだ。
『そんなん、やってみないとわかんねーからさ。』
…本当は、
母親を裏切る俺より、
親友を裏切る綾ちゃんの方が
辛いのかもしれない、と、一瞬、思った。
けど、
そんなこと言ってたら
ここから先、一歩も進めねぇから。
『もう、俺以外のヤツのこと考えんの、禁止。』
脱がされかけて乱れた服装のまま、
腕の中の小さな身体を
激しくキツく抱き締めた。
…ふと、前に及川からもらった
熟女AVのワンシーンが頭をよぎる。
あの時、男を拒んでた熟女が
ぐらりと心を奪われたセリフ。
この、俺が。
口下手を自覚してるこの俺が。
精一杯の背伸びで、言ってみる。
『キレイゴト言ったって、
ホントはまだ、"女"でいたいだろ?』