第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『…頑張ったんだけど、どうかな?』
昼。
校舎の日陰に座って
俺の顔を覗きこむ、彼女。
初めて俺に作ってくれた弁当は、
彼女の人生で初めて、
自分以外の人のために作った弁当らしい。
『おお~、すげぇ!』
派手でチマチマした、
…いや、色鮮やかで手の込んだ、か…
おかずがたくさん詰め込まれた弁当は
確かに、女子力全開の渾身の作。
『うまそっ、いただきます!』
卵焼きから口に入れる。
『ん、うまっ!俺の好きな味!』
『ほんと?よかったー!
先輩の好み、綾さんに教えてもらったから。』
…綾ちゃんの名前が出て、ドキッとする。
だけどスルーするのは不自然だから、
飯を頬張りながら、短く聞いた。
『会ったんだってな。』
『ん。勝手してごめんなさい。
でも、ケーキご馳走してくれてね、
いっぱい話してくれて、このお弁当箱も
一緒に買いに行ってくれたんだよ。
ほんとに、ステキな人だねー。
確かに先輩が言ってた通り、
"おばさん"て言葉は似合わないと思った!』
『ふーん…
お、このソーセージ、もしかして宇宙人の形?』
返事を考えるのが面倒くさくて、
話題をそらす。
彼女は、おかずの一つ一つ、
こだわりや苦労話をしてくれた。
そして俺は、それを聞きながら、
つい、
綾ちゃんの作るものと比べてた。
…もちろん口にはしなかったし、
綾ちゃんが昨日、言ってた通り、
彼女の話一つ一つに頷きながら口にする。
はしっこに入ってたブドウで、完食。
『んー、んまかった!ごちそうさん!』
『足りた?』
『あぁ。』
…本当は、
ブドウを入れるスペースがあるなら
ミートボールとかの方が嬉しいけど(笑)
そんなことは、口にしない。
部活の前に、パンでも買って食おう。
『また、作ってもいい?』
『嬉しいじゃん。』
『…でもね、やっぱり毎日は無理かも。
今朝もお母さんと大騒ぎだったし。
毎日、お弁当作るって、大変!』
『(笑)気が向いたときでいいよ。』
『綾さんに、またいろいろ
教えてもらいたいって伝えてー。』
…いちいち報告なんかいらない、って
綾ちゃん、言ってたけど。
彼女の伝言を伝えるのは、いいよな?
『わかった…あのさ、』
綾ちゃんの言葉を思い出す。