第141章 あなたにもう一度後日談(3)中編
祝いの宴も中盤に入り大人達はお酒が入り会話が弾む中……私は広間から一旦出ると子供達の湯浴みと着替えを済まし、お城の女中さんが準備してくれた部屋へと向かう。
「本当にお城に泊まるの?」
「うん!明日、信長様が剣術の稽古つけてくれると申しておった!早く父上より強くなれるようにと」
「ふふっ。解った。でもあまり無理はしちゃ駄目だよ?」
私は二人に今夜は良い子で寝ていると、きっと素適な贈り物が届くとサンタの話をし寝かしつける。
「………もう、寝た?」
「うん。一日で沢山お出掛けしたからかな?もう、ぐっすり眠ってるよ」
家康は静かに襖を開け部屋の中に入ると、そっと手に持っていた物を床に置いた。
「さっき使いの者に御殿から取って来て貰った。……こっちが竹千代で、これが時姫」
「うわぁ!クマさんの縫いぐるみ!きっと時姫喜ぶね!……竹千代の方は何が入っているの?」
私がそう言って小さな木箱を見つめると、家康は箱の括りを解き中身を見せてくれた。
「……これ、守り刀?」
私は指で鞘の部分に刻まれた徳川家の家紋をなぞる。
「……もう五歳だからね。徳川の後継者として自分の身は自分で守らないといけない。それに……俺が側に居ない時にひまりと時姫を守れるように」
家康は私の頬に触れただ一言「ごめん」と、言って再び木箱の蓋を閉じると竹千代の枕元に置いた。
(そっか。ちゃんと私の気持ちを気にしてくれて……)
私は向けられた背中に頭を乗せ、腕を回す。
「嘘は吐きたくないから正直に言うね。……この時代は仕方ないことが沢山あるのも、危険が沢山潜んでいることも解ってる。でもやっぱり、まだ幼い竹千代に刀を持たすのにはどうしても抵抗があって……出来れば持って欲しくないし、使う所なんて想像もしたくない」
「………ひまり」
「でも、必要なのもちゃんと解ってる。だから………」
私はゆっくり体を起こし、正面に向き合ってくれた家康を真っ直ぐ見る。
「……家康が平和な世を築いてくれる日を、待ってるね」
ずっと側で見てるから……私がそう言った後、家康はフッと表情を和らげた。
「必ず……成し遂げて見せるから。ずっと側で俺を支えて」
私達はこっそり過ごしていた……
二人の時間を少しだけ。