第139章 あなたにもう一度後日談(2)あとがき
二人は玄関先でひまり達を見送った後、どちらかともなく手を絡ませ身を寄せる。
「良かったですね。本当に幸せそうで」
「……だな。徳川家康があんなに良い男だとは思わなかった。安心して、十年間大事に育てた娘を任せられる」
「……言わなくて良かったのですか?」
「既に素敵な父親がわりの方が居るようだからな。それに……君も言わないつもりなんだろ?」
「もう二度と会えなかったあの子に……こうして時々、会えるだけで幸せですから。それにしても、神はやはり「神」でしたね」
「あぁ。それに俺の込めたモノが、二人を導くチカラになれて良かった」
もしかしたら、あの子をこの世界に再び導いたのは……
孫として大切に育てた母の分の褒美かもしれないな。男は着物の袂に手を入れ、空を見上げる。
「ふふっ。あの一人旅が奇跡の始まりだなんて……」
女は男の腕に自信の腕を絡ませた。
「天邪鬼な神。天邪鬼の彼。どちらの心もあの子は動かしたのですね」
そして男は女の体をそっと抱き締めた。
下界を映し出す泉を覗き、二人が出逢えたことを確認し……ゆっくり息を吐く。
男には夜が明ける前に、花を摘むように伝えた。
ーー立派に親代わりを務めたお前に、褒美として一つ願いを聞き入れる。申せ。
ーー彼女にもう一度会わせて下さい。
ーー……ならば、もう一度生を与える。時が来たら再び我は訪れよう。
(やはり、名乗り出なかったか)
人間の愛は奥深い。
再び泉に手を添え、
言い合いをしている二人の姿を映し出す。
家康の変態!
ひまりの浮気者
最後までしてないもん!
へぇ……。最後までは?
会話を聞き、
思わず目を閉じる。
あの時、我と交わる予定だった。
本来忠実に「過去」を再現したはずが……あの地に訪れる順を変えられ、思いの外、邪魔も入った事で消えかけた記憶を再び取り戻し夢の呪縛を解かれ……二人の愛を「証明」された。
(まさか口づけ一つで呪縛を解かれるとは、な)
夢の世であの者に成りすまし、交わろうとした我に……罪を与えたのはこの二人の「真実の愛」だったのだろうか。
「真実の花」
今夜は聖夜。
贈り物には良いかもしれない。