第138章 あなたにもう一度後日談(2)後編
行き先が同じ事を知りすっかり女に懐いた竹千代は、嬉しそうに話をしながら歩いていた。
(他人の空似にしても、流石に似すぎだし)
俺は二人の二、三歩後ろを歩き、竹千代の隣に歩く女の姿を見て頭を捻る。
物腰柔らかそうな雰囲気。ふわふわした歩き方。ひまりよりも少し背は高いし、落ち着いた感じはあるけど……笑い方や仕草はほんとそっくり。
まるで10年後のひまりを想像したような姿は、間違いなくあの女と瓜二つ。
しかし、竹千代は女の顔を見ても何も反応しなかった。
(……あの時、もしかして記憶を消したとか?)
ーー……少し、眠らせただけですので心配はありません。
昨夜、ひまりの母親である天女(あまね)は確かにそう言って……。
花になった所もこの目で見た。さっきは驚いて思わず声を掛けたが、向こうは明らかに初対面だという反応。
(まぁ……間違いなくひまりは、凄い反応するだろうけど)
赤の他人の空似なのか。神の仕業なのか。誰かが起こした奇跡なのかは知らないけど……。
ーー……でもお母さんの事お祈りしたいし、何よりこうして家族の側に居れる事、ちゃんと感謝したいから。
ひまりが、喜ぶなら俺は別に良いけどね。
「……そう言えばあんた、なんであの職人の所に行くの?」
俺は肝心な事を聞き忘れていた事を思い出す。
女はゆっくり振り返り、微笑む。
「ふふっ……実は今朝、出逢ったばかりなのですが」
お互い、一目で恋に落ちてしまって。
「一緒に暮らす事になりまして」
俺の開いた口は当分の間、閉じることはなかった。