第135章 あなたにもう一度後日談(1)
ーー私もだよ。
あの後、本当は……ひまりは姿を消した。一瞬だけじゃなくて、俺の腕から完全に消え……一輪の蕾の花に。
ーー……っ……く……。
他の皆んなの時が止まって居る事にも気付かず、神がただ黙って、俺を見下ろしていた事にも気付かず……ひたすら溢れたモノを、その蕾に降らせ……濡らした。
ーー何で……っ、何で全部一人で背負って……。
幼い頃、身を縮めながら泣いていた日々。まるでその頃に戻ったかのように大の男が情けないぐらい泣き続け……俺の心はほぼ壊れていた。
ーー………我が憎いか。
その声を聞いてまだ神が居た事に驚き、周りの皆んなの異変にもやっと気付いた。俺は立ち上がり刀を拾い上げる。
ーー……憎い?それだけの感情では足りないぐらい、許せない。
そして、神に再び刀を向けた。
ーー……無駄だ。人間如き神に触れる事は出来ない。
ーー俺の分の罪?天女の宿命?ふざけるな。俺達が出逢ったのも、愛し合ったことも……決して罪なんかじゃない。
神だろうが、俺からひまりを奪う者は……
ーー許さない。
俺は蕾を守るように間を取り、刀を一気に振り下ろしたが……神が顔を上げた瞬間、驚きに返る。
ーーな、なんで………。
ピタリと手が止まり、
刀がカタカタと震え……
ーー……天邪鬼な神だからな、我は。
目の瞳の色。
髪の長さ。
違うのはそれぐらいで……
顔は俺と瓜二つだった。
ーー……神を動かすモノなど何一つない。ただ、奇跡は人間が起こすモノ。
神は蕾に視線を向け、感情が全く読めない……そんな声色で淡々と話す。
ーー……あの蕾を摘め。我は心の花を摘み天女の生を断ち切った。今度はお前があの花を摘み……生を断ち切れ。
人間である時ひまりは、何度も奇跡を起こした。