第127章 あなたにもう一度第三幕(14)
俺は羽織の袖に手を入れ、ある場所へと向かう。城下町から少し離れた森の近くにある、平屋の一軒家。その奥にある、小屋へと俺は足を進め軽く挨拶をして中に入る。
「君か……今、丁度完成した所だ」
「すいません。無理言って急いで貰って……」
俺は職人が出してくれた椅子に腰掛け、完成された花の形をした髪飾りを受け取る。その繊細な作りに思わず目を奪われた。
手の平よりは少し小さ目の花飾り。
つまみ細工で何枚もの黄色の布が花弁となって重なり、本当の花のように綺麗だった。
あの時、ひまりと見た幻の花に瓜二つ。
「……嫁さんにあげるのかい?」
「あっ、はい。いつも大事にしてくれるので」
佐助が用意してくれたクマの縫いぐるみは時姫に贈ろう。そう思い、ひまりへの贈り物は別に頼んでおいた。
耳飾りも櫛もこの職人が作った物。今まで俺達二人を見えない何かで繋げてくれていた気がして、不思議な縁を感じていたのは確かだ。
(にしても……どっかで見たことがある気がするんだけど)
お茶を湯飲みに注ぐ、職人を改めて見る。櫛を頼みに来た時はそんな風には、思わなかったが……この髪飾りを頼みに来た時、何故かそんな気がして仕方がなかった。
年は五十前後で、独り身だとは聞いた。
「それ程、大切にして貰えるなら職人として本望だ。一度ぜひ直接お礼を言いたいのだが……」
「今度、連れて来ます。娘にもまた何か作って頂きたいので」
俺は出された茶を手に取り、ゆっくり口に運ぶ。やはり、思い出せそうにはない。
「娘さんもいるのかい?」
「まだ、小さいですが。妻に良く似ていて……」
(そのせいか、やたらと三成が時姫を可愛がって正直迷惑している)
「お代はここに置いておきます。用がありますので、これで失礼します」
帰り際に職人に、今度はぜひ家族四人で来て欲しいと言われ、俺はその事を約束しその場を後にした。