第126章 あなたにもう一度第三幕(13)
寒い夜を寄り添いたくて、わたしは自然と家康の布団の中に入り、幸せな時間を噛み締めるように、ぴったりと身体を寄せて……時折外から聞こえる風の音に、耳を傾けていた。
「………本当に急にどうしたの?もしかして記憶が戻ったりしてないよね?」
私は内心ドキッとしながら、首を横に振る。今はバレてはいけない。明日の夜まで、この嘘だけは突き通すと決めていたから。
(また、記憶消されたら今までの全てが無駄になってしまう)
きっと、母は私が辛い想いをしないように……逃れられない運命をすんなり受け止めれるように、記憶を消そうとしたはず。
(でも……何であの時急に、全部の記憶が戻ったんだろう)
それだけは今でも解らなかった。
「俺は嬉しいから、良いけど。夫婦だって聞いて、我慢してない?」
「全部、私の意志ですから……我慢なんてしていません」
温かい手が頬を掠め、私は頬に当たる手に触れ目を閉じる。家康の触れ方が、まるで壊れ物を扱う用にいつも以上に優しくて……嘘をつく度に胸がちくりと痛む。
(本当にごめんね)
私はふと、家康の手首に何かが巻かれていることに気づき……そっと触れてみる。
「これ………」
もしかして……。
私は顔を上げる。
「そう言えば、すっかり忘れてた……これ、ひまりの組紐。木に括り付けてあったから」
って、何の話か解らないか。
家康は私の手首に組紐を付け……「これで髪でも結いな」そう言う。そしてそれが聞こえるのと同時に、私のおでこにコツンと何かがぶつかった。