第121章 あなたにもう一度第三幕(9)
「………寒くない?」
「……大丈夫です」
石碑の前に辿り着き、俺は後ろからひまりを抱き締めた。すると微かに身体が強張るの感じて、少しだけだから我慢して欲しいとお願いをする。
「………俺に触られるの、嫌?」
「………………」
(………返事はなしか)
「もし、ひまりが見えない俺達と暮らすのが嫌だったら……すぐにでも安土城に住めるように頼んでくる。その代わり……」
俺は息を吸い込み、あの時と同じ台詞を……
「これからも、会って欲しい」
口にした。
あの時は理由も教えて貰えないまま、断られ……最後には諦めてしまった。
今度こそ、ちゃんとした返事が欲しかったのかもしれない。返事を待っているとひまりはつま先に視線を落としたまま静かに口を閉ざし、思い詰めるように自分の手を胸の前で震わせ……ゆっくりと俺の方に振り返った。
「………今は、お返事出来ません。ただ、一つだけお願いがあります」
顔を上げ、見えないはずの俺の瞳。それがまるで見えているかのように視線を合わせ……震えていた手が俺の頬を包む。
柔らかい日差し。それが風がすり抜ける僅かな時だけ、俺たち間に差し込む。
「……今夜、私を抱いて下さい」
一瞬聞き間違いかと思える程。それぐらい消えてしまいそうな小さな声。
でも、その言葉はちゃんと俺の耳に……全身に届いた。