第119章 あなたにもう一度第三幕(7)
夕方家に戻ると出迎えた女中から、竹千代が昼間怪我を負った事を聞き急いで部屋に向かう。
「何処怪我したの?」
中に入り、襖を閉める。
ひまりは時姫を膝の上で抱き、竹千代の頭に手拭いを当てていた。
「………すいません。私が側に付いておきながら」
庭で遊んでいる最中に雪で足を滑らせ、その時に頭を打ったみたいだと話し……
「……目を離してしまった時のことなので……どんな風にぶつけてしまったのか解らなくて」
ひまりはギュッと自分の唇を噛み、今にも泣きそうに肩を震わせながら何度もか細い声で謝った。
「男だし、それぐらい大丈夫だよ」
気にしなくていい。
俺は時姫を自分の膝の上に乗せ、そう言うとひまりは頭を軽く下げ立ち上がり、手拭いを冷やしに部屋から出て行く。
「ち、ちう……え?母上は?」
「起きたのか。今、手拭いを冷やしに行った所だ」
起き上がった竹千代の頭の腫れを見て、これぐらいなら大丈夫だと判断し念の為安静にしておくように伝える。
「後で良く効く軟膏を塗ってやるから。これに懲りて、雪の日はあまり走り回るな」
「は……い。……それより父上。母上はいつから目が悪くなってしまったのだ?」
(え………)
一気に嫌な汗が流れる。
何故そんな事聞くのか尋ねると……竹千代は不思議そうに見つめた襖の向こう。
「母上の目の前で転けたのだが、泣くまで気付いておらんだから……」
(まさか……)
ーー目を離してしまった時のことなので……
俺はさっきの会話と、目覚めた時の違和感を思い出した。