第117章 あなたにもう一度第三幕(5)
「……いえ、教えて頂いてありがとうございます」
そして再び二人で月を見上げた時。
シャランッ……。
懐かしい音が届く。
今度は驚かせないように少し髪に触れてもいいか尋ね、ひまりは暫く悩むように俯いた後……俺の方に体を向け、コクリと頷く。
指先で甘い香りがする髪を掬い……出来るだけ優しい手つきで、そっと耳に掛ける。
シャランッ……。
耳元で揺れる耳飾り。
反対側の髪も耳に掛けてみるが……
(あれ……片方しか付いてない)
記憶がなくても身に付けてくれていた。それは正直嬉しかったが、もう片方の行方が無性に気になる。
(失くしたとは言ってなかったし……)
自分に都合が悪い事でも正直に話す性格のひまり。その事を黙っている筈はなかった。
「…………どうか…されました?」
「……髪……綺麗だと思って」
恐らく、今聞いても解らないだろう。
そう思い俺は髪を指先に絡ませ、少しでも触れれる今の時間を噛みしめるように、まるで花弁に口づけを落とすようにそっと唇を寄せた。
この時、ひまりは
どんな気持ちで、
俺に触れられて
何を考えて……
目を伏せていたのか……
知るのは
もう少し先の話だった。