第117章 あなたにもう一度第三幕(5)
子供達が御殿に着いたのは、ひまりが目覚めた日の二日後だった。
「母上!!」
「は、はうえっ!」
「………竹千代、時姫。……長旅ご苦労様」
ひまりは、自分の子の名を呼ぶ。それから少しぎこちなさそうに手を伸ばし、ゆっくりと二人の小さな頭に触れそのまま優しく撫でた。
竹千代と時姫は嬉しいそうに笑い、ひまりの胸に飛び込むとあーだこーだと旅路の話をする。
俺はその光景に胸が痛む。
あの後、状況を受け止めれず疲労も溜まっていた俺はただ膝の上で、微かに温もりが残る手で拳を作り震わせていた。
それを見ていた信長様と佐助が、代わりに今までの出来事をひまりに説明し……その場に居た全員が明らかに動揺を隠せない中、ただ一人冷静に話を聞いていたひまり。
そして話を聞き終わった後。
ーー私に子供が居るのでしたら、せめてその子達の前では母親をさせて下さい。母親が記憶を失ったと知れば、きっと悲しませてしまいます。
そう言って、
僅かに見せた悲しみの色。
でも、またすぐに感情のない表情に戻り俺の方に体を向け「お世話になります」と、他人行儀のように頭を下げた。