第114章 あなたにもう一度第三幕(2)
「……私から申し上げることはただ一つ。あの子はもうすぐ目覚める。そして全ての記憶を失っている」
「なっ!ふざけるのもいい加減にっ!」
声を荒げつめ寄ろうとした時、キッとひまりが時々するような目で睨みつけてくる。
「あなたのせいですっ!!あの子はあの子は……っ……!あの時、貴女の分まで罪を背負ってしまった!!」
(えっ…………)
その言葉に、頭に靄がかかったように暗くなる。
俺の分……?
「……どうゆうこと?俺の分までって……一体ひまりの罪はっ!!」
「それは答えれません。だから、記憶を消したのです……あの子にこれ以上、辛い思いをさせたくない」
もうこれ以上、苦しませる訳にはいかないっ!!
強い母親としての想いが、嫌ほど表情と声から伝わり……俺は返す言葉を失う。天女はひまりが記憶を失ってしまうからこそ、俺には真実を知って欲しかったと話した。
「……私は今でもあの子の幸せを願っています。ただ……」
苦しげに眉を潜め、胸の前で組んだ手が震えていて……。
「……竹千代が五歳を迎える前夜、きっと綺麗な月夜になるでしょう」
意味深な言葉を残し、天女は立ち上がる。羽織をふわりと靡かせそのまま部屋を出て行き、城から忽然と姿を消した。