第113章 あなたにもう一度第三幕(1)
「……とりあえずこれで解りました。……つまり俺と家康公は夢の中に居て、本体はずっとこちらにあったと」
ならば、恐らく彼女も……。佐助はゆっくりと家康の隣で眠るひまりを見た。
「……そしてあの女が全て関与している。俺は今すぐ城に戻って問いただしに行く」
家康は握りこぶしを膝の上でつくると、名残惜しそうに繋がれた手に口づけを落とす。そしてもう一度頬に触れぬくもりがある事を確認した後、立ち上がり、馬の準備を頼む。
「でも、その女……母親かもしれないんだろ?普通、久々に会えた娘を眠らすか?ってか、そんな事が出来るのか?」
理解に苦しむように幸村は頭を振る。
「確かに可笑しいな。家康の筆下ろしの相手がひまりなら、わざわざこんな回りくどい手を使わずに、口で言えばいいものの」
「秀吉、お前は脳なしか?問題はそんなチカラを何故その女が持っているかだ」
「……普通の人間なら、考えられませんね」
三成は顎に手を当て、妖か狐かどちらかではないかと真剣に悩む。
「その女も女だが……そうなるとひまりも……」
信長は自分があの時に会ったのがひまりだと知り、色々不可思議な事が見え始める。
それは家康も同じだった。
全てを思い出した今……
戻った記憶が逆に謎を招く。
……真実を知った時、必ずあなた様は私の元に来るでしょう。
天女(あまね)は確かにそう言った。
馬の準備が整い、部屋を出る前。家康は周りの目など全く気にもせずにひまりの赤い唇に自分の唇を重ねる。
「お前な……」
呆れたように誰かが息を吐く。
「ひまりをお願いします。くれぐれも触らないで下さいよ」
残った武将達にそう告げ、その場を後にした。
「あの馬鹿……頼んでおるのか、忠告しておるのか……あれでは解らん」
信長はそう呟き、眠るひまりを目の前に……。
(……やはり、お前は本物の天女なのか)
心の中でそう問いかけた。