第110章 あなたにもう一度第二幕(9)
鳴り続ける雷音。
「……い、えやすさん」
腕の中のひまりが、ひまりと重なる。
「ひまり……」
俺は吸い込まれるように顔を近づけ、指で顎を持ち上げる。鼻先がぶつかりそうになる距離。すると、ひまりの長い睫毛が揺れ、その大きな瞳が閉じるのを見て……自分も目を伏せようとしたその時。
《ゴトンッ!!》
その音に反応して、思わず身体を離し振り返ると……床の上に何かが転がる。
「あっ!!」
ひまりはそれを見て慌てて手を伸ばし、中身を拾う。俺はその写真の中に一枚だけ混じっていた絵を、咄嗟に掴んだ瞬間……言葉を失い固まった。
まさか……。
「ひまり、この絵の女の人……」
《ドクドクドク……》
心臓が煩いぐらいに鳴り出す。
「えっ?………あれ?こんな絵……あったかな?」
「…………知らないの?」
尋ねるとコクリと頷き、不思議そうに次は首を傾げるひまり。
「……綺麗な人だし、モデルさんかな?」
今度おばあちゃんに聞いておきますね!そう言って、再びひまりは箱の中に仕舞い棚の上に戻した。
(間違いない。今のは……)
俺はふらっと立ち上がり、口元を抑える。さっきまでの甘い雰囲気が忘れ去られたように、俺たちの間からすっぽりと消えていた。
「だ、大丈夫ですかっ!家康さん、顔色が……」
心配そうに覗き込むひまり。俺は用事を思い出したからと嘘をつき、家から出る。出た瞬間、血の気が一気に引くのが自分でも解り、気づいたら雨の中……俺は歩いていた。