第108章 あなたにもう一度第二幕(7)
「……何か手伝う」
着替えを済まし台所に立ったひまり。俺は隣から声を掛ける。
「そんなっ!家康さんはお客さんなんですから、座って待っていて下さい」
すぐ作りますから!そう言ってひまりは手際よく準備を始めるが落ち着かず、俺は近くに置いてあった芋を掴むと包丁を借り皮を剥く。
「……切るのは得意だから」
(切ると斬るでは少し違うけど)
心でそう呟きながら、黙々と手を動かす。ひまりは俺の包丁捌きに感心するような眼差しを向けた後、鍋に油をひき肉と玉ねぎを炒め始めた。
「何か……少し照れますね!」
新婚さんみたいで……
小さい呟き。それに思わず反応して、手に持っていた芋を落としそうになりながら俺は冷静を保つ。
(どうしたらこんな可愛い性格に育つんだろう)
俺も両親は幼い頃に亡くしてる。
だから、愛情なんてもの知らずに育った。
母親の愛情なんて無縁。けれど、子供達を育てるひまりの姿は本当に眩しかった。
ーー竹千代、時姫〜。今日は何して遊ぼっか?
ーーえっ!壊しちゃったの!なら……まず謝りに行って、一緒に直そうね!
ーーふふっ、私も大好きだよ。
全てを包み込むような、大きな愛情。
それを知っているからこそ、不思議な感覚に陥る。
「五歳の誕生日に母が行方不明になった事を、後から父に聞きました。だから、あまり記憶になくて……。でも凄く笑顔が優しかった事は覚えてるんです」
ひまりはそう言って遠くを見つめ
、瞼を伏せた。