第99章 あなたにもう一度(15)
「……あと、団子屋の娘の話は聞かなくていいの?」
私はその言葉に笑うのを止め、困ったように眉を下げる家康の顔を手で包む。
「……絶対に許してあげない」
私はいつもの仕返しに頬を膨らませ、少しだけ強めの声で言う。ひまりちゃんからさっき事情を聞いたことは家康にはまだ話してない。
(ちょっとぐらい、困らせてもいいよね?)
私の言葉を聞いて、家康はますます困ったように眉を下げ顔を曇らせる。
(……嘘だよ。本当は凄く嬉しかった)
帰ってくるかも解らない私を、ずっと待っていてくれて……。離れている間も、ずっと想ってくれていて……。普通の男の人だったら、そんな誘惑されたら絶対に断らないようなことを……断ってくれて。
なのに言い訳一つ言わないから、家康は本当に凄い。
「ひまり……」
私は家康の首に腕を回し、鼻先が触れそうな距離まで顔を近づけた。
「……お仕置きだから、口づけ禁止」
「っ!!」
目の前にある翠色の瞳が途端に揺れる。
(本当は私もしたい。でも……この部屋ではして欲しくないから)
誰かを抱いた部屋だと思うと、流石に嫌だった。
でも、不思議とそこまで嫌悪感が湧かないのは……
家康が包み隠さず話してくれたから。
……なのかもしれない。