第99章 あなたにもう一度(15)
御殿に着くと何故か家康は玄関ではなく、敷地の奥に建っている離れに向かった。
「どうして離れに?」
私は素直に思った疑問を口にする。この御殿で暮らしていた頃、唯一この離れだけは来たことがなかった。
女中さんは時々訪れ掃除をしていたみたいだったけど、後でこの離れは御殿が建つ間の仮住まいだったことを教えてもらった。
「……中で話すから、とりあえず入って」
家康にそう言われ、私はすぐ後ろに付いて中に入る。離れといっても私達の世界で言えば、十分立派な平屋の一軒家。
今でも女中さんが掃除をしてくれてるみたいで、すぐに住めそうなぐらい中は綺麗だった。
家康は一番奥にある部屋の襖を開け、何かを思い出すかのようにじっと中を見つめる。
「………家康??」
名前を呼ぶと家康はハッとしたように振り返り、私の手を引いて中に入ると一旦手を離し、蝋燭に火を付けた。