第96章 あなたにもう一度(12)
俺は呼吸を急いで整え、目の前に跪く。
「……遅かったではないか」
スッと細めらた視線が、容赦なく俺に突き刺さる。
「……ひまりに会わせて下さい」
「……俺は必ず幸せにしろと、言ったはずだが?」
「……っ、申し訳ありません」
その言葉に言い返す事が出来ず、拳を爪が食い込むほど握りしめる。
「……ひまりは、ただ黙って肩を震わせ泣いていた。……誰が此処まで、一人で帰らせる理由を作れと言った!!!!!」
「……っ!」
滅多に出さない激が部屋に響く。
普段出す血の通わない声よりも、それは本気を意味している事を知っている俺は、思わず口を閉じかけるがここで怯むわけにはいかない。
「……包み隠さず向き合う為に、迎えに来ました。ひまりと話をさせて下さい!」
「……事情は先程、お前の城から戻った政宗から、おおよそは聞いた。ひまりは一切口を割らんだからな」
「言い訳など何一つするつもりは有りません」
ひまりを不安にさせたくなかったとは言え、結局あそこまで追い詰めたのは他でもない俺自身だ。
お願いします!
俺は深く頭を下げる。
「……家康、丸腰で来た心行きだけは勝ってやる。それ程、大事ならば二度と己の下らん独り善がりでひまりを追い込むな」
夫婦なら寄り添え。
「ひまりがいくら歩み寄った所で、お前がそれでは成り立たん」
その言葉は、珍しく俺の胸に響いた。