第96章 あなたにもう一度(12)
朝日が昇るのと同時に、佐助と共に舟着き場に向かう。
「この娘さんなら、湖まで乗せてったぜ!」
「湖……!!」
その話を聞き、昨夜ひまりが隠れ宿で夜を過ごしたことを悟る。
(城に連絡が入りそうな場所は避けていると思ったが……)
逆にその考えが仇になっていた事が解り、俺は体の中の息を一気に吐き出す。
「彼女の居場所解りましたか?」
「……もう移動してる可能性はあるけど、念の為行ってみる」
再び馬を走らせ急いで向かうが、すでにひまりは姿を消した後だった。
俺は木の枝の先端にキラリと光る物が風で揺れているのに気づき、それを掴み取る。
淡い黄色の絹糸で編まれた組紐。
これがあるという事は……紛れもなくひまりが此処に来ていたという証。
ーー完成!!……上手く出来たかな?
ーー……へぇ、組紐まで編めるようになったんだ。
ーーこの前ね、お城に来た職人さんに編み方教えて貰って……
似合うかな?
この組紐で髪を結い、ふわりと笑うひまりの姿が今でも目に浮かぶ。
俺はそれを仕舞い、佐助に視線を向け……口を動かす。
「俺は急いで安土に向かう。このままだとひまりに会うのが難しくなるから……佐助はどうすんの?」
本当は安土城に行くまでに探し出したかったが、こうなった以上贅沢は言えない。今は一刻も早くひまりに会って話がしたい。
俺は馬に飛び乗り手綱を掴む。
「俺も一緒に行きます。安土の辺りも調べてみるつもりでしたから」
佐助はそう言って馬に跨った。
「……しかし、安土だと何か不都合になる理由が?」
「……あそこには父親の面を被った、鬼が居るからね」
鬼退治に行くつもりで、向かう。
颯爽と風を切り一歩間違えば地面に振り落とされるぐらい、物凄い勢いで馬を走らせた。