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イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第95章 あなたにもう一度(11)




きらきらと青い水面に映る朝日を掬うように、指先で触れてみる。

すると小さな丸い円が、徐々に大きな円へと変化して……まるで私の不安が少しずつ広がっていったように、すぅと一つになって消えた。



私はその場にしゃがみ込み、家康との思い出を辿る。




ーーねぇ、家康?……私、ちゃんと母親になれるかな……?


祝言を挙げて間もない頃、悪阻が大分落ち着いた私を家康は、この湖に連れてきてくれた。


ーー……ひまりの、その真っ直ぐな気持ちがあれば十分、いい母親に慣れる気がするけど?


まぁ、俺の血も引いてるから捻くれる可能性もあるけどね。


ーーふふっ……出逢った時より、大分まあるくなったと思うけど?


ーー……それは、誰かさん限定。



家康は、そう言って目線を外し少しだけ赤くなった目元を手で隠した。

あの時、そう問いかけた理由は話せないままだったけど……母親の存在を五歳までしか知らない自分が、ちゃんと子供を育てる事が出来るのか……少し不安だった。



(だから、教育係が必要って言われた時……)



この時代は避けて通れない道なんだって。

そう思うのと同時に……



(私では駄目なんだ。って思ってしまった)



竹千代を立派に育てる事が、私には出来ない。周りから、まるでそう言われたみたいで。



あの時、庭で思わず隠れたのは……もしかしたら、自信がなかったのかもしれない。胸を張って、私が母親だって……言える自信が。


私は結っていた髪を解き、その組紐を近くにあった木の枝に引っ掛ける。


私が此処に居た事を伝える為に……。


(さっき馬を借りた時、女将さん凄く心配してたから)


もしかしたらもう、城に知らせを送ってるかもしれないと思い、私は荷物を持ち馬に跨る。



そして最後の思い出の場所に向かって、手綱を引いた。




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