第94章 あなたにもう一度(10)
俺はもう一度心の中で読み、握り締めると……パラパラと降り出した雨が文を濡らす。
ドンッ!
(ひまり)
目の前の壁に俺の中の感情をぶつけ、再び走り出す。そしてひまりが行きそうな所を、虱潰しにあたる。しかし時間帯が悪く、店も閉まり本格的に降り出した雨のせいで、町から人の姿も消えはじめてゆく。
(歩いて行ったのなら、それ程遠くには行ってないはず)
今度は宿に的を絞った。
「なっ、何ですかこの絵はっ!!」
「説明する暇はない。この娘が来たか来てないかを聞いている!」
「悪いがうちには来てないですね」
「今日の客には居ないよ」
「残念だが知らないな。こんな上玉な娘、来てたら忘れねぇ」
写真を見せていちいち驚かれるのも慣れた頃、俺は深夜になる前に出向いた宿でひまりの行き先を知る。
「あっ!何となくこの娘さん似た人なら来たよ!」
笠被ってたし、顔ははっきり見えなかったが、川舟の乗り場を教えて欲しいと……そう、宿の番頭は話した。
俺はその話を聞き急いで舟着き場に向かうが、既に舟頭姿はなく……代わりに意外な人物がそこに居た。
「もしかして佐助……?」
「家康公!!」