第19章 友が為
朧は頭を下げ、話を続ける。
「星崩しの禁忌の術を抗するほどの秘術を行使するとなれば、死神は必ずや自ら動くでしょう。そこに、我々が付け入る隙もあるかと」
「ほう。数多の敵を地獄に引き摺り下ろして惨殺してきた死神が、天を目指して抗い、刃を向けるか」
「我々が動くまでもなく、泳がせた方が情報を引き出せると?」
「左様でございます。あやつを泳がせれば、我々の障壁になり得る最も厄介な敵を炙り出すことが可能かと」
「最も厄介な敵だと?」
朧の含みを持たせた発言に、会合に不安な空気が漂う。
天導衆にとって厄介な存在。
天人を排除しようと抗う侍共や、そのトリガーとなっている吉田松陽とは違う、もう一つの存在。
朧はその存在の名を口にする。
「華岡愁青。奴は"龍脈"を介した高度な医術で、多くの命を救い、その裏では"龍脈"の真の力を解明していると見受けられます」
「"真の力"。まさか……」
天導衆の注目は一気に、10年前に姿を消した死神に向けられた。
その医術で多くの命を救ってきた英雄。
人を救う力は、人の心を動かし操り、その数多の命は強大な力、また一つの大きな国へと成りかねる。
幕府から見れば、この国家をも崩しかねる力を持った危険因子。
しかし、朧の言ったことが本当であれば、それは国どころか、天をも覆しうる……
「朧。華岡愁青は、何故そんな女童1人ごときに、國一つをも動かす強力な力を授けたのか?」
当時は、10歳にも満たない小さな童1人に、何故そんな力を教えたのか。
朧は間を置いてから、静かに再び口を開く。
あの死神は、
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ただの弟子ではありません。
あの娘は、吉田松陽にとっても、
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たった1人の特別な存在。
奴は………