第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
私は専門学校二年生の時、ある男性に恋をした。
友達の紹介で知り合った、六つ年上の人。
紳士的で優しくて、紹介してくれた友達も交えて何度か飲みにも行った。
就職する直前の、バレンタインの夜。
思い切って、手作りのチョコレートケーキと一緒に告白。
結果は、玉砕。
「年も離れてるし、妹みたい」だって。
仕方ない。
いつになるかはわからないけど、時が忘れさせてくれるのを待つしかない…。
そんな風に思ってた。
それから一か月もしないうちに、お父さんの危篤の知らせ。
正直、お父さんには裏切られた。
お母さんのことも傷つけて、私たちを追い詰めたお父さん。
許せなかった。
会いたいとも思わなかった。
でも、叔母さんからの突然の電話。
お父さんが死んでしまうかもしれない……そう思った時、私の頭の中には優しいお父さんの思い出がいっぱい蘇ってきて…。
動揺して、足がすくんでしまった。
どうしたらいいのか、何をしたらいいのか、わからなかった。