第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
「おっし、ケーキ入刀しよーぜ!!」
ハイテンションの木兎がリエーフを引っ張ってくる。
「ええっ!?今日嫁さんいないんすけど…」
「おう。一人でやれ!」
「一人でケーキ入刀とか、どんな罰ゲームっすか!?」
リエーフは抵抗してるけど。
ま、木兎が言い出したからには観念するしかねーな。
しまいには、全員の "入刀コール" が湧き、リエーフは言われるままナイフを手に取った。
「はい、ケーキ入刀ー!」
スマホやデジカメのシャッター音が鳴る。
リエーフも何故かテンション上がって、キメ顔してる。
リエーフのくせに顔だけはいいんだよな。
無駄にイケメンだから、一人なのに妙にサマになってる。
一旦ケーキを下げ、料理もほとんどなくなった頃。
食後のコーヒーとともに梨央ちゃんのケーキが切り分けて運ばれてきた。
「美味いですね」
「ん、美味しい」
向かいの席に座ってた赤葦とツッキーも、ローテンションながら食べ進めている。
それを見た木兎が得意気に腕を組んだ。
「そのケーキはな、梨央ちゃんが作ったんだよ!」
「誰です?」
「梨央ちゃん!俺の友達!」
そこは "黒尾の友達" って言えよ。
一応反応してやる赤葦はまだ優しい。
ツッキーはシカトだ。
俺も早速食べてみる。
スポンジがフワッと柔らかい。
生クリームの程よい甘さと、苺とキウイの酸味。
こんなにケーキを味わって食ったことは、たぶんない。
美味いよ、梨央ちゃん。
梨央ちゃんのケーキとリエーフのひと言で締め括られた会は、そこでお開きとなった。