第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
それからは俺も合間を見て、飲んで食って喋って楽しんだ。
集まったメンバーは久々に会う奴ばかり。
リエーフのお祝いなんだけど、まるで同窓会みてーなノリ。
まるで高校の頃に時間が巻き戻ったように錯覚した。
「黒尾さん、ケーキいつお出しします?」
「ああ、そろそろお願いできますか?」
料理も程々に減ったしこのタイミングでいいかと思い、店長にお願いする。
厨房に目をやると、梨央ちゃんがニッコリ笑ってこっちを見てる。
パティシエとしての梨央ちゃんのスイーツを見るのは、これが初めて。
店長が、カートに乗せたそれを運んでくる。
すると、その場に大きな歓声が上がる。
「すげー!これバレーボール!?」
「食うのもったいねーな!」
「写メ!写メ撮ろ!」
「うまそー!」
ワラワラとケーキの前に長身揃いの男が集まって、それはすぐに隠れてしまった。
でも、この目でしっかり見えた。
丁寧に絞られた生クリームが縁取る、ドーム型のケーキ。
苺とラズベリー、キウイが綺麗に曲線を描いて、白の上を彩る。
大きなビスケットの上には、チョコレートで"HAPPY WEDDING"の文字。
すげーな…。
一人であんだけのもん作れるなんて。
間近になって、梨央ちゃんからリエーフ夫婦の画像が欲しいと言われた。
披露宴で撮ったそれを送ったんだけど、その意味がわかった。
ケーキの上に置かれた砂糖菓子。
ひとつは、銀色の髪に緑の瞳をしたリエーフ。
もうひとつは、披露宴の時の髪型と同じ、花冠を乗せた嫁さん。
梨央ちゃんのことだから、二人の姿を思いながら、ひとつひとつの作業を丁寧に、心を込めて作ってくれたんだと思う。