第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
「んじゃあ、リエーフ!改めて、結婚おめでとーう!!かんぱーいっ!!」
木兎の乾杯の音頭で始まったリエーフの結婚祝い。
会場のカフェには、むさ苦しい程の男たち。
デカイ奴が多いから尚更だ。
テーブルには充分な料理と飲み物。
見渡してみれば取りあえずそれぞれ飲み食いを楽しんでるみたいで一安心。
「黒尾。久しぶり」
声をかけてきたのは、海。
グラスと、料理を盛り付けた皿を手にしている。
「おー、久しぶりだな、海。酒足りてる?」
「足りてるよ。料理美味いな、ここ。黒尾も働いてないで食べたら?」
なんとなく空いたグラスを脇に寄せたり、テーブルにこぼした料理を拭いたり。
いつからこんなオカン気質になった?俺?
海に差し出しされた皿にはローストビーフ。
箸で摘まんで口の中へ。
おお…!美味い!
他の料理も、海の言うとおり確かに美味い。
あの店長さん、やるな。
今度は個人的にも是非来たい。
「夜久残念がってた。今日仕事で」
「まあ仕事じゃ、しゃあねーよな」
「そう言えばこの前、夜久の彼女と会ったよ」
「へー。どんな子?」
「可愛い系。で…」
「「ショートカット!」」
「ブレねーなぁ!」
昔からあいつは可愛い系ショートに弱い。
「黒尾はまだロング派?」
「よく覚えてんな、そんなこと」
「黒尾と夜久のケンカ、面白かったからね」
呑気な声と共に海は笑顔を向けてくる。
ロング派、ねぇ…。
正直、女の髪の長さなんて特にコレって好みはなくて。
ただあん時は、長い髪が似合う梨央ちゃんを思い浮かべて、そう言った気がする。