第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
「テツさん、こっち!」
日曜日。
俺は駅前のカフェで、汐里と待ち合わせていた。
「悪い、待った?」
「全然。私もさっき着いたとこです」
ハキハキ喋りながら、バッグからパンフレットをいくつか取り出す。
友達と海外旅行を計画していて、アドバイスが欲しいらしい。
「始めはグアム行こうかと思ってたんですけど、話してるうちにヨーロッパ行っちゃう?ってなってね?」
「そりゃまた全然違うな」
「でしょ?でもヨーロッパも行ってみたかったからいいんです。クリスマスのドイツって素敵じゃない!?って盛り上がって。どう思います?」
「まず、冬のドイツはクソ寒い。でも…」
「え!?そうなの?じゃ、やめる」
「やめんのかよ」
「だって寒いの無理。東京の冬ですら無理なのに」
さっぱりとしたこの性格は、正直言って見た目に反する。
背中まであるロングヘアーをクルクル巻いて、パッチリしたデカイ目と、それを縁取る長い睫毛。
ぷっくりした唇を、いつもグロスで潤わせてる。
服装も、ピンクとか花柄とかスカートとか、そんな女らしい感じが好きみたいだ。
小柄だし、一見 "守ってやりたい女の子" ってタイプなのに…。
実は行動力があって白黒ハッキリさせたい、姉御肌。
「おもしれーな、汐里は」
「褒め言葉ですよね?」
「もちろん。あ、夏ならどこもお薦め。イタリアやスペインは考えてねぇ?」
「スペインってどこだっけ?北欧?」
「大丈夫かお前?」