第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
話が一区切りしたところで、俺は梨央ちゃんが持ってきてくれたコーヒーに手を伸ばしかける。
飲まねぇ方がいいかな。
時間も時間だし…。
伸びた手を一瞬そこに留めた。
「あ、それ。デカフェだよ。ごめんね、さっきビックリして言いそびれちゃった」
梨央ちゃんがカップを掴まない俺の手に気づいて、そう言う。
「ごめん…。違った?」
「いや、そう。よくわかったね。エスパー?」
「ふふっ、エスパーかも。てっちゃん、カフェインよく効いちゃう体質だったよね?」
「……そんなこと、覚えててくれたんだ」
やべぇ…嬉しい。
目の前の彼女は、俺の言葉に笑ってうなづいて見せる。
「ねーねー。梨央ちゃん、今度遊ぼうよ!」
そんな雰囲気を壊す呑気な声。
は?
"梨央ちゃん"?
思わず眉間にシワが寄る。
知り合って一時間も経ってねぇだろ。
馴れ馴れしいっつーか、アホみたいにコミュ力高いっつーか。
いや、そんなことはどうでもよくて。
いきなりデート誘うとか、何考えてんだ?
「近いうち、仲間内でバーベキューしようって話しててさ。よかったら梨央ちゃんも来ない?」
ん?
デートじゃねーの?
「もちろん、黒尾もいるよ。どう?」
ああ。
確かにバーベキューは計画してる。
梨央ちゃんとバーベキュー…。
それは……楽しそうだ。
「でも…お邪魔じゃない…?」
戸惑うように、俺に視線を向ける梨央ちゃん。
「梨央ちゃんさえ良ければ、おいでよ」
俺がひと押しすれば、梨央ちゃんは嬉しそうにうなづく。
「じゃあ、ぜひ」
久しぶりに見た梨央ちゃんの笑顔。
改めて見ても、やっぱり綺麗だ。