第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
「へー。こんなとこあったんだな」
「プロジェクターの貸し出ししてくれるみたいだし。披露宴の映像流したりできるよな!」
「そういや、リエーフ披露宴で号泣してよー。あれ、また見てーわ」
画像の中のそのカフェは、木製のテーブルや椅子とは別に赤いファブリックのソファ席もある。
ダークブラウンの床に、空間を照らす間接照明が落ち着いた雰囲気。
駅近だからアクセスもいいし、何より主役のリエーフんちからも近い。
「じゃあ、予約しちまうか」
木兎はその場で早速そのカフェに電話を入れる。
思い立ったらすぐ行動しなきゃ気が済まないらしい。
こっちは楽だけど。
「来週の金曜、黒尾大丈夫?閉店後にコースとかの説明してくれるって」
「ああ、いーよ」
電話口を押さえてそれだけ確認すると、木兎は店との約束を取り付けた。
そして通話を切ったか切らねぇかもわかんねぇ勢いで、そのまま俺に話を振る。
「そう言えば、汐里から連絡くる?」
「ああ、この前会ったけど」
「え!?俺は!?」
「お前リーグ中だっただろ」
オレオレうるせーな。
お前抜きで会っちゃいけねーの?
唇を尖らせてブツブツ文句言った後、木兎はグラスを手に取り、チラッと俺に視線を向ける。
「で?汐里の気持ち、変わらねぇって?」
「やっぱり好きだ、って。酔いながらだけど…そう言った…」
「はー。一途だね。そんな風に想われんの、羨ましいわ」
「……」
木兎は何杯目かもわからない酒を煽る。
汐里は俺の大学時代の後輩。
「女の子紹介して!」とごねた木兎のために、合コンのセッティングを頼んだことが始まり。
その合コンには赤葦、ツッキーの無気力コンビがいたものの、彼女的には随分楽しかったようで。
それ以来、男四人の集まりにも時々参加してくる。
ワイワイ楽しくやってる間はいい。
でも、仲間内で恋愛感情を抱いてしまった途端、これがなかなか厄介で。
ホント男と女ってのは、ややこしい。