第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
「そういや、お前が送ってくれた画像見たけど!チビちゃんも披露宴来たんだな」
「ああ、来たよ。相変わらずチビちゃんだった」
それに、落ち着きのないあっちこっち向いたオレンジ色の髪の毛も変わらなかった。
懐かしいな。
「烏野のコーチしてるんだっけ?」
「そうそう。いまだに自転車で通ってるって。車持ってんのに」
「アハハ!チビちゃんらしいなぁ!」
それからはバレー合宿の思い出とか、赤葦と歩いてたらあいつだけ逆ナンされてムカついたとか、それをツッキーに電話したらロクに話聞いてくれなかったとか。
そんな取り留めのない話をする。
久しぶりに会っても、話題に挙がるのは昔馴染みの奴らの話。
それだけ大切な仲間、大切な時間だったということなのかもしれない。
翌日の仕事と終電のことが頭を掠めるまで、ひとしきり飲んで喋った後。
また来週、と手を上げて、俺たちは別れた。
終電に乗り込み、まばらな席の合間に座る。
窓に映るのは乗客の顔。
出勤時のような景色の流れは見えない。
視線のさ迷わせ場所もない俺は、静かに目を伏せた。
眠い。
仕事の疲れと言うより、これはアルコールのせいだ。
木兎がガンガン飲むから、ついその流れで俺も飲んじまった。
アルコールは睡魔を呼ぶ。
酒を飲むようになって身をもって知った。
そう言えば、昔梨央ちゃんもビール飲んだあと、無防備に寝てたっけ……。