第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
俺が配属される部署のフロア。
廊下の明かりも消えてしまったこの時間。
自販機の煌々とした光が目に眩しい。
残業はいつものこと。
俺は時間を気にしつつ、会社のエントランスへ向かう。
大学は文系だったこともあり、自分の興味と勉強してきたことを擦り合わせて旅行業界を選んだ。
一応、大手と言われている旅行会社。
ツアーへの同行や団体旅行の営業。
経験できることは全力で取り組んだ。
そして一年前。
念願のツアープランニングの部署へ異動。
やりがいはある。でも、納期間近のこの時期は死ぬほど忙しい。
入社した年に少し背伸びして買った、相棒とも言える腕時計に目を落とす。
今日も終電の時刻が迫っていた。
外へ出て駅に向かってオフィス街を歩く。
その道すがら、スマホの通知音が聞こえてきた。
確認すると一件のLINE。
[ヘイヘイヘーイ!]
こんなノリから始まるメッセージを送ってくる奴は、俺の知る限り一人だけだ。