第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
席に案内された流れのまま、フォンダン・ショコラを注文する梨央ちゃん。
店内を見渡してた俺が視線を目の前に戻すと、梨央ちゃんがジッとこっちを見てる。
「何?」
「てっちゃん目立ってる」
「え?」
「入口ですれ違った女の子たち、振り返ってたよー」
悪戯っぽくそう言って、フフッと笑う。
「こんなにデケー奴なかなかいないからな。バレー仲間の中にいると忘れがちだけど」
バレーしてたら180センチオーバーの奴なんてゴロゴロいる。
でも一般的に見て、俺が飛び抜けて身長高いことは自覚してるワケで。
街中にいてもすぐにわかるらしく、「この前○○にいたよね?」なんて後から言われることもしばしば。
そん時声かけてくれよ!ってこっちとしては思うんだけども。
そういう目立ち方するのは、若干面倒くさい。
「んー…それだけじゃないと思うけどな」
梨央ちゃんは意味深にそう言った後、店員が置いていった炭酸水を口にした。
「てっちゃんさ、彼女いないの?」
何?突然。
「いねーよ」
「じゃあ、好きな人は?」
「いない。梨央ちゃんは?」
「いたけど……フラれちゃった。バレンタインに」
窓の外に向けた瞳を一瞬悲しげな色に染めて、梨央ちゃんは力なく笑った。
バレンタイン……。
あの日の学校帰りは元気そうだったよな?
夜、会ったりしたんだろうか。
どんな男だったんだろ?
梨央ちゃんが惚れるような男。
「もったいねーことする男がいるんだな」